活動報告
病院長報告(2011.04.08)
Ⅰ)被害と初期対策
1) 被害状況、物資の集積- a) 第2、第3研究棟の内部は壊滅的被害、検査部門もかなりの被害、
手術部も当初使用不能、旧外来棟も上層階はかなりの被害、外来棟として使用中の旧管理棟もかなりの被害、ライフラインは一時的には全停止(電気、水道、ガス、エレベーター)、電気は非常用電源を用い、人工呼吸器等の機器を維持
ガスがないために滅菌等は外部へ搬送して依頼
幸い、新病棟は被害なし、患者職員ともに人的被害はほとんど無し - b) 地震当初から物資の不足が想定されたので、大学関係者、国立大学病院(文科省)、学会関連を通してできるだけの医薬品、材料、生活関連物資、食糧を集積
Ⅱ)機能復旧段階
2) 第一段階(病院機能の保持)- a) 検査機能を透析室に一時的に部分移転して整備、最終的に病棟13階に移設し通常機能を確保、
手術に対処するために局麻手術室を全身麻酔対応に変更(二部屋を整備)、救命救急外来での手術も可能(緊急および準緊急に対処可能)
手術室の復旧作業を進め来週からはフルで稼働 - b) ライフラインの整備と病院機能の回復
- c) 入院患者の安全確保、初期トリアージ活動(仙台市周辺からの被災者の受診と入院、産科、在宅酸素療法患者の収容など)
- a) 機能不全に陥った県内の病院からの患者の受け入れ(厚生年金病院など)
合言葉:最前線の病院を疲れさせるな。裏方に徹する。(要請には無条件で最大限応じる。必要としているものを必要な量、質で支援)
- a) 県内の病院からの患者搬送の受け入れ(特に現在でも最前線で活動中の石巻日赤、気仙沼からは連日の患者搬送がある)ヘリポート、救急車
- b) 東北大学病院を起点とした県外への患者搬送(透析患者約80名を気仙沼-大学病院入院加療-空路で北海道へ搬送 など)
- c) 県内県外病院への医師の派遣(ガソリン不足に対処し効率を良くするため、マイクロバス等を定期便で運用、現在も継続中)気仙沼、石巻日赤、斉藤病院、県南中核病院、大崎、その他多数、一部県外の医療機関への支援
- d) 県内病院への医療物資の提供(物流が十分でない時期に要請があった医療機関を支援)石巻日赤、気仙沼、斉藤病院、真壁病院、その他多数
- e) 県内の病院への食料の提供(同上)
- a) 避難所への医療チーム派遣の提言と一部派遣斡旋(急性期は乗り切ったので、今後は長期的な医療の維持が必要、各地域に拠点を設け各拠点に最低でも一か月滞在する部隊を駐留させる。現地の要望に応えうるチームだけに派遣を依頼する体制を県が主導中、大学病院としてはいくつかの大学病院にお願いをして拠点に派遣できるチームを編成し斡旋した。県の体制が整備されたので今後は県がすべてに責任を持っていただけると思っている)
- b) 特殊診療チームの編成、病院および避難所への巡回診療支援
感染症科、中国体彩网、眼科、耳鼻科、皮膚科、糖尿病、てんかん科、小児科、産婦人科、歯科 等が医師会や関連学会と協力してチームを編成し、資材の集積?配布、および巡回診療 - c) がん患者で治療中断中の患者への治療再開発計画(治療機能をなくした病院から癌患者受け入れ)
- d) 病院機能:外来は平常通り、手術も来週からは通常の件数を実施できる
- a) 検死業務への支援(歯科部門)
24時間体制で対処、証明書の発行
平成23年3月11日(金)
東北大学病院の初動活動について
3月11日の14時46分発災(被災写真:消化器外科医局)。電気、水道、ガスのライフラインが停止しましたが、電気については非常用電源に切り替わり、使用が可能となりました。ただちに病院長を本部長とする災害対策本部を設置(写真:災対本部)、まず、各部署における安否、被災状況を調査し、病棟に構造上の損壊がないこと、職員、入院、外来患者さんに人的被害がなかったことを確認いたしました。
有線電話、携帯電話は一切つながらず、本院のDMAT隊員が災害時用無線、衛星電話を用いて、宮城県の災害対策本部と連携しながら情報を集約いたしました。
救急患者対応としてトリアージポストを設置し、各科の協力を得て各トリアージポストに医師を3交代制で分担配置しました。在宅酸素療法を受けている患者さんに対し、入院や酸素ボンベの貸し出しを緊急に行いました。
被災写真:消化器外科医局
災対本部
平成23年3月12日(土)
東北大学病院の初動活動について
被災した関連病院に勤務?出張していた医師から、診療スタッフの安否、ライフラインの状況、診療に必要な不足物資の情報、周辺避難所の状況などの情報が得られ、石巻地区、気仙沼地区、塩釜?多賀城地区、名取?亘理地区への支援が必要であることがわかりました。
トリアージポストにて多くの患者さんを診療いたしました。3月15日までで、のべ人数は緑582名、黄色173名、赤73名、黒10名にのぼります。直接受診した患者さん以外に、陸路で石巻?気仙沼地区から搬送されてくる重症患者さんを収容しました。多くの透析施設が被災したため、透析を必要とする患者さんを収容しました。
手術については、中央診療棟の安全性が確認されなかったため、病棟にある2つの手術室を使用して他院から搬送された患者さんの緊急手術を行いました。検査部は漏水、損壊により、血液ガスと電解質測定のみが可能、放射線部は、X線フィルムでの出力のみが可能、薬剤は在庫薬での対応のみが可能な状況でした。災害対策本部は県、国、国立大学病院機構、DMAT本部、各学会などと連絡をとり、医療材料、支援物資、医療チームの派遣を要請し、本院を拠点として物資の集積、分配を行いました。
平成23年3月13日(日)
東北大学病院の初動活動について
引き続き、トリアージポストでの救急診療、石巻?気仙沼地区から搬送される患者の入院加療を行いました。出産、透析、酸素療法などのために病棟のみならず、外来化学療法センター、血液浄化療法部をフル活用いたしました。
災害対策本部は情報の集約につとめ、支援が不足していることが明らかとなった病院?避難所に対し、本院に集積されつつある物資のなかから、可能な限りの物資、医薬品、食料を提供する方針といたしました。
平成23年3月14日(月)
東北大学病院の初動活動について
石巻赤十字病院での診療応援のため、大学病院から医師、看護師、薬剤師からなる診療チームの派遣、および物資、医薬品、食料の提供を開始いたしました。派遣医師は、内科、外科、整形外科、麻酔科、小児科、耳鼻科、脳外科、産婦人科など多岐にわたっています。また、派遣医師を送迎するために、マイクロバスの定期運行を開始いたしました(写真:マイクロバス1?2)。この定期バスは継続して運行中であり、4月も継続予定です。
石巻赤十字病院、気仙沼市立病院、仙台医療センター、県南中核病院、宮城県立こども病院に産婦人科医を派遣いたしました。
全国の大学からの診療応援チームの装備情報、チーム構成、日程を管理し、石巻赤十字病院災害対策本部、県の担当課と連携しながら、石巻、気仙沼地区を中心とした避難所にこれらのチームを派遣いたしました。東北大学病院災害対策本部の要請で診療を行った各大学からの派遣チームの数は17チームにのぼります。
写真:マイクロバス1
写真:マイクロバス2
平成23年3月15日(火)
医師派遣について
気仙沼市立病院での診療応援のため、大学病院から医師の派遣および物資、医薬品、食料の提供を開始いたしました。派遣医師は内科、外科、整形外科、麻酔科、小児科、耳鼻科、泌尿器科、整形外科、脳外科、産婦人科など多岐にわたっています。また、派遣医師を送迎するために、マイクロバスの定期運行を開始いたしました。
放射線被曝の検査について
女川原子力発電所の近くに位置し、発災前から被曝対策体制を整えていた石巻赤十字病院から測定?除染に必要な資材を貸与いただき、宮城県と連携し、福島県の避難地域で放射線被曝疑いがある方の放射線汚染検査および除染を開始いたしました。
歯科検視業務について
宮城県警と連携し、歯科部門が検視業務を開始いたしました。歯科医師36名、8か所の検視会場への派遣でスタートし、3月31日までにのべ224名(最大1日当たり40名)の医師が、28か所の派遣会場で(気仙沼、南三陸、女川、石巻、利府、東松島、名取、角田)検視業務を行いました。
平成23年3月16日(水)
避難所での診療活動について
- 石巻地区で、医師18名、看護師10名、薬剤師5名が避難所での診療を行いました。石巻到着後、5チームに分かれ、Aチームは、向陽小学校(避難者600人)とコミュニティーセンター(避難者300人)、Bチームは青葉中学(避難者1300人)、Cチーム蛇田小学校(避難者1000人)、Dチームは大街道小学校(800人)、釜小学校(避難者600人)、Eチームは石巻高校(避難者700人)にて診療、投薬を行いました。各避難所のライフライン、疾患頻度、必要な薬剤などのアセスメントが災害対策本部で報告され、石巻日赤病院の災害対策本部との連携、支援ニーズの把握が行われました。
- 気仙沼地区の避難所で、眼科チームが診療を開始いたしました。
医師派遣について
県南中核病院での診療応援のため、医師派遣を開始いたしました。また、派遣医師を送迎するために、ワゴン車の定期運行を開始いたしました。
平成23年3月17日(木)
避難所での診療活動について
- 石巻地区で、医師15名、看護師10名、薬剤師5名が避難所での診療を行いました。石巻到着後、5チームに分かれ、Aチームは青葉中学(避難者1100人)、Bチームは釜小学校(避難者600人)、Cチームは大街道小学校(避難者800人)、Dチームは、石巻高校(避難者700人)、門脇中学校(避難者1400人)、Eチームは、女川町立病院(100名入院)、女川第三小学校(避難者180名)、保福寺にて、診療、投薬を行いました。
- 仙台市若林区で、医師11名が避難所での診療を行いました。3チームに分かれ、それぞれ六郷市民センター、蒲町小学校、蒲町中学校、八軒中学校、遠見塚小学校にて診療、投薬を行いました。
医師派遣について
石巻斎藤病院での診療応援のため、医師派遣、および物資、医薬品、食料の提供を開始いたしました。
平成23年3月18日(金)
医師派遣について
いわき共立病院の診療応援のため、循環器内科医師2名を派遣いたしました。
避難所での診療活動について
石巻地区で、医師29名、歯科医師1名、看護師10名、薬剤師5名が避難所での診療を行いました。石巻到着後、5チームおよび中国体彩网、眼科チームに分かれ、Aチームは、向陽コミュニティセンター、Bチームは、向陽小学校、コミュニティセンター、Cチームは、蛇田小学校(避難者1000人)、Dチームは蛇田中学校、Eチームは青葉中学校(避難者1200名)、にて診療、投薬を行いました。中国体彩网?眼科チームは、向陽コミュニティセンターと向陽小学校にて、中国体彩网10名、眼科40名を診察いたしました。また、歯科医師は、各診療所にて歯ブラシの配布、歯科衛生指導を行いました。歯科アセスメントシートに記載してもらい、歯科ニーズを掘り起こしました。
平成23年3月19日(土)
避難所での診療活動について
- 石巻地区で、医師33名、看護師10名、薬剤師5名が避難所での診療を行いました。石巻到着後、4チームに分かれ、Aチームは、桃生小学校(避難者89人)、Bチームは飯野川中学校(避難者300人)、Cチームは飯野第一小学校(避難者110人)、Eチームは中津山第一小学校(避難者100人)にて診療、投薬を行いました。
- 岩沼地区で、医師2名、看護師2名、薬剤師1名が避難所での診療を行いました。
気仙沼市立病院からの透析患者受け入れについて
78名の透析患者を受け入れました。23日まで当院で透析を行い、自衛隊機にて北海道の透析施設に移送いたしました。
平成23年3月20日(日)
避難所での診療活動について
- 岩沼地区で、医師3名、看護師2名、薬剤師1名が避難所での診療を行いました。
- てんかん科医師が、石巻地区の病院に抗てんかん薬を配布いたしました。
平成23年3月22日(火)
避難所での診療活動について
石巻地区、気仙沼地区の避難所で、中国体彩网チームが診療を開始いたしました。
医師派遣について
大崎市民病院での診療応援のため、医師派遣を開始いたしました。また、派遣医師を送迎するために、ワゴン車の定期運行を開始いたしました。
当院の診療について
- 再来予約患者を対象に外来を再開いたしました。
- 当院の「がん診療相談室」において被災されたがん患者さんへの電話対応を開始しました。
平成23年3月23日(水)
避難所での診療活動について
歯科部門が石巻、南三陸、亘理、名取?岩沼の各市町において、巡回診療を開始いたしました。3月31日までにのべ66名の歯科医師が避難所診療にあたっています。
平成23年3月25日(金)
気仙沼地区に加え、石巻地区で、眼科チームが避難所での診療を開始いたしました(眼科診察風景)。
平成23年3月28日(月)
避難所での診療活動について
感染管理室活動報告をアップしました。
当院の診療について
新患を含め、全面的に外来を再開いたしました。
平成23年3月31日(木)
平成23年4月1日(金)
避難所での診療活動について
眼科、耳鼻科、皮膚科の合同診療チームが、女川地区、志津川地区で避難所での診療を開始いたしました。
平成23年4月6日(水)
3月22日より再開した「東北大学病院がん診療相談室」は、被災により通院中の病院が機能停止した、あるいはご自身の被災により治療の休止をやむなくされた「がん」患者さんに、対応可能な病院の紹介(多くは当院での受け入れの対応)を行ってきました。マスメディアを通して避難所など全県下に広報し、3/22~4/6までに55件のご相談が寄せられています。
平成23年4月8日(金)
避難所での診療活動について
感染管理室から「感染症予防に関する資料」をアップしました。
平成23年4月9日(土)、15日(金)
当院の診療について
被災後の石巻地区のがん医療の状況や今後の対応についての調査の目的で、東北大学病院(がんセンター?腫瘍内科?放射線治療科)、東北がんネットワークの合同チームが石巻赤十字病院を訪問し、石巻市立病院や仙石病院のがん治療担当者を交えて、同地区の諸問題点の解決に向けて可能な援助方法が検討されました。東北大学病院と東北がんネットワークでは、同地域のがん医療を援助?救済すべく、今後も継続的に関与していきます。
平成23年4月21日(木)
当院の診療について
東北大学病院(腫瘍内科?大学病院がんセンター)と東北がんネットワークの合同チームは被災した岩手県大船渡市と釜石市を訪問し、同地区の「がん医療」の拠点病院である岩手県立大船渡病院、岩手県立釜石病院において、各病院の「がん診療」の担当者と、同地区の「がん医療」の現状の分析および今後の協力体制について討議を行いました。今後も、同地区の「がん医療」の支援を継続していくことで一致しました。
平成23年5月19日(木)
当院の診療について
東北大学病院(腫瘍内科?大学病院がんセンター)と東北がんネットワークの合同チームは被災した福島県相馬市と南相馬市を訪問し、同地区の南相馬市立総合病院、伸裕会渡辺病院、鹿島厚生病院、公立相馬総合病院を訪問し、各病院の「がん診療」の担当者と、同地区の「がん医療」の現状の分析および今後の協力体制について討議を行いました。今後も、同地区の「がん医療」の支援を継続していくことで一致しました。
(写真は伸裕会渡辺病院の正面玄関にて。右から、石岡、渡辺泰章先生(理事長)、森。)
(写真は公立相馬総合病院の正面玄関にて。右から石岡、熊 佳伸先生(病院長)、森。)
平成23年5月13日(金)
当院の診療について
東北大学病院(腫瘍内科?大学病院がんセンター)と東北がんネットワークの合同チームは被災した福島県いわき市を訪問し、同地区の「がん医療」の拠点病院であるいわき市立総合磐城共立病院、独立行政法人労働者健康福祉機構福島労災病院において、各病院の「がん診療」の担当者と、同地区の「がん医療」の現状の分析および今後の協力体制について討議を行いました。今後も、同地区の「がん医療」の支援を継続していくことで一致しました。
(写真は磐城共立病院院長室にて。右から、池谷伸一先生(消化器内科)、阿部道夫先生(外科)、石岡、森、岩橋先生(心療内科))