診療の特色
小児科は内科系のこどもの病気すべてを扱うため、診療の範囲は多岐に渡ります。下記に示すように、対象疾患ごとにグループに分かれ、さまざまな検査?治療を行い、大学病院としての専門性を発揮しています。また、検査や入院生活での痛みや苦痛、ストレスを出来るだけ軽減するため、薬剤による鎮痛や鎮静のほか、医師、看護師、薬剤師、臨床心理士、チャイルドライフスペシャリスト、保育士、院内学級教諭などの多職種チームで連携し、こどもたちにより良い医療を提供いたします。
詳細は当科HP(ご挨拶 - 東北大学医学部小児科)をご覧ください。
対象疾患と診療内容
詳細は当科HP(グループ紹介 - 東北大学医学部小児科)をご覧ください。
血液?腫瘍?免疫疾患
血液疾患
白血病、再生不良性貧血などの小児血液疾患、小児がん、および原発性免疫不全症などを中心に診療を行っています。白血病は血液細胞が未熟な段階でがん化し無制限に増殖する病気で、顔色が悪くなったり出血したりすることで気づかれます。
固形腫瘍
神経芽細胞腫、ウイルムス腫瘍、肝芽腫、横紋筋肉腫、骨肉腫などの固形腫瘍は、腫瘍ができた部位(おなか、背中や足など)が腫れてきます。これらの病気は抗癌剤を使った化学療法、放射線療法、造血幹細胞移植などによって治療しますが、我々は全国規模のグループスタディーに参加し治療成績の向上を目指しています。
免疫疾患
抗体が産生されない無ガンマグロブリン血症、T細胞およびB細胞に障害のある重症複合免疫不全症、食細胞の殺菌能が低下している慢性肉芽腫症などの患者さんに対し、免疫グロブリン補充療法、造血幹細胞移植などを行っています。
治療実績
これまでに骨髄移植や臍帯血移植などの同種造血幹細胞移植を約220例に施行しています。病気に苦しむこども達に病気をどう伝えるかも重要な課題です。臨床心理士を加えた医療スタッフ全体でこの問題に取り組んでいます。 平成25年2月に東北大学病院は、東北地区で唯一の小児がん拠点病院に認定されました。今後も小児がん診療の充実、入院環境の改善、長期フォローアップ体制の整備を推進します。
図1:血液疾患を診断するための骨髄像 図2:神経芽腫のCT像
腎臓病
対象疾患と診療内容
腎臓の様々な病気の診断から治療まで幅広く行っています。腎臓病は初期には無症状のことが多く、学校検尿で異常を指摘されて見つかることも多いです。診断のために必要な尿検査?血液検査、超音波検査、腎生検等、一連の検査を当科で行うことが可能です。診断や重症度に合わせて、必要な治療や見通しを丁寧に説明致します。難治のネフローゼ症候群についても、原因や合併症に関する研究を行っており、患者さんができる限り通常の生活を送ることができるように、さまざまな治療法を用いて寛解導入?維持を目指します。 先天性の腎臓の構造異常や機能異常についても、当院および他の医療施設や研究機関と連携し、画像検査や遺伝学的解析を用いて、迅速な診断と治療が行えるようにしております。
治療実績
急性および慢性の腎不全に対して、小児の血液浄化療法が可能です。慢性的な腎不全に対する内科的治療、腹膜透析を行っております。体格の小さいお子さんの腎移植は当院では行っておりませんが、東京女子医科大学や東邦大学等の移植施設と連携し、ご紹介と移植後の管理を行っております。 常に最新で最善の診断と治療が行えるように努めております。

図3:腎生検(IgA腎症)の病理画像
先天代謝異常症
対象疾患と診療内容
生物の体の中では活動に必要なエネルギーや蛋白質を作ったり、老廃物を壊したり、その過程でできた毒性物質を無害なものに変換するなどの化学反応(代謝)が知らず知らずのうちに行われています。このためいくつもの種類の酵素が必要です。先天代謝異常は生まれつき酵素のうちのどれかの働きが悪いため、体に必要なものの不足や毒性物の蓄積により症状がでます。 東北大学小児科は以前よりこの領域の診断?治療?研究に取り組んでいます。グリシン脳症、糖原病Ⅰb型、複合カルボキシラーゼ欠損症、シトリン欠損症(NICCD)、ガラクトース血症IV型など世界に先駆けて当グループが病態解明にかかわった疾患もあります。現在もアミノ酸代謝(フェニルケトン尿症、ホモシスチン尿症、など)、有機酸代謝(プロピオン酸血症、メチルマロン酸血症など)、糖代謝(糖原病など)、尿素サイクル異常(OTC欠損症、シトリン欠損症(NICCD)など)、銅代謝異常(ウィルソン病、メンケス病など)、ライソゾーム病(ゴーシェ病など)などの多くの病気を診療しています。
治療実績
従来の食事療法、薬物療法に加えて酵素補充療法(ゴーシェ病、ファブリー病、ハンター病、ポンぺ病など)、移植療法(骨髄移植、肝移植)など最新の治療を取り入れ、従来治療法が無いとされた代謝異常症の新しい治療法に取り組んでいます。当グループは宮城?仙台地区の新生児マススクリーニングの精密検査を担当するばかりではなく、青森県?福島県の精密検査も担当しています。専門性の高い領域であるため、それ以外の疾患に関しても県内はもちろんながら全国の主治医からの診断や治療の相談を受けつけています。
神経疾患
対象疾患と診療内容
複数の小児神経専門医、てんかん学会専門医を中心として、てんかん、精神運動発達遅滞、変性疾患、神経筋疾患、脳炎?脳症などの様々な小児神経疾患や、自閉スペクトラム症?注意欠如多動症などの発達障害の診療を行っています。小児科病棟にネットワーク化されたビデオ脳波モニタリング室があり、高解像度MRI、SPECT、PETなど各種画像検査を行って難治性てんかんの診断と治療を関連他科と連携しながら精力的に行っており、広く他県からも紹介患者を受け入れています。
治療実績
原因不明の神経疾患に対して、代謝疾患スクリーニング、各種神経生理検査、そして遺伝子学的アプローチを駆使して診断と治療を行っています。外来には一般神経外来と発達支援外来があり、多くの患者さんが通院しています。

図4:てんかん精査用の病棟ビデオ脳波モニタリング室
内分泌疾患
対象疾患と診療内容
健全な成長は、小児において大切なことです。小児の成長障害や低身長の原因には多くの因子が関与しますが、その一つとして内分泌疾患があります。当科では、様々なホルモンや成長因子の異常による内分泌疾患を診療対象としており、下垂体疾患、甲状腺疾患、性腺疾患、副腎疾患、カルシウム?リン代謝異常、骨系統疾患、水電解質異常、小児糖尿病など、多岐にわたります。日本内分泌学会認定の内分泌専門医が診療を担当します。
治療実績
上記のさまざまな内分泌疾患のほか、新生児マス?スクリーニング(先天性甲状腺機能低下症?先天性副腎過形成)における精密検査?治療も行っています。また、当科が中心となり、宮城県小児糖尿病サマーキャンプも毎年行っています。 「こどもの身長が低いので心配」、「肥満を指摘された」、「骨の病気と言われたが病気のことについてもっと知りたい」、「1型糖尿病と診断されたが情報があまりないので、患者の会に参加したい」など、お子さまについてご心配なことがありましたら、お気軽にご相談ください。
新生児
対象疾患と診療内容
東北大学病院周産母子センターの新生児室は病床数33床(NICU 15床、GCU 18床)で運営されています。専任の新生児科医10名と後期研修医2名、助産師/看護師が約60名、保育士2名で診療にあたり、専属の医療社会福祉士2名、臨床心理士3名、理学療法士2名から積極的に支援を受けています。県内では最も産科診療の充実した施設であるため、母体ならびに妊娠合併症、胎児異常、成育限界児など最重症患者の診療を受け持っています。年間の入院患者数は200-300名で、その中には超低出生体重児20-30名、人工呼吸管理40-50名、外科的手術15-20名が含まれます。主に、極低出生体重児、胎児水腫、染色体異常、先天性心疾患、新生児外科疾患などを診療しています。
外来診療
外来では新生児科医が乳幼児健診、成育発達支援、療育/就学相談を行い、その状況に応じて小児神経専門医、臨床心理士、理学/作業/言語療法士、医療社会福祉士からも支援を受けることができます。早産もしくは病気やハンディキャップを持って生まれたこども達が、どうすればご家族と一緒に幸せに暮らせるかを、地域の小児科医、保健師、訪問看護師、保育士などと連携しながら一緒に考えます。
循環器疾患
対象疾患と診療内容
生まれつき心臓に病気のある先天性心疾患や、不整脈、川崎病、心筋症、心筋炎などの小児の心臓病すべてを対象として診療にあたっています。胸痛や動悸、心臓検診などで心雑音や不整脈の疑いがあるといわれた場合にも診察や検査を行っています。また、成人先天性心疾患の患者さんの受け入れを進めており、小児期から成人期に至る移行期医療も積極的に行っています。
各種検査と治療
心電図、ホルター心電図(24時間心電図)、運動負荷心電図、心臓超音波検査(心エコー)や心臓MRI?CT、シンチグラフィー(核医学検査)、心臓カテーテル検査などによる診断、カテーテル治療などを行っています。また、手術が必要な患者さんに関しては、心臓血管外科と連携し、種々の診断、手術前後の内科的治療などを行っています。

図5:心臓カテーテル検査の様子
年間症例数
小児病棟
西5階 |
31床 |
東5階? |
3床 |
小児病棟入院数 |
500例 |
造血幹細胞移植(骨髄移植?臍帯血移植) |
?12例 |
ビデオ脳波モニタリング |
50例 |
心臓カテーテル検査?治療 |
80例 |
腎生検 |
10-15例 |
筋生検 |
5例? |
周産母子センター新生児室
集中治療室(NICU) |
?15床 |
回復治療室 |
?12床 |
周産母子センター新生児室入院数 |
221例 |
新患、新入院患者数(2024年度)
リンク
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