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研究

救急車からの12誘導心電図伝送システムの本格運用開始(県北?県南地区 -急性心筋梗塞患者の救命率向上を目指して-

2015.05.29  プレスリリース

急性心筋梗塞注1などの心臓病は、発症後の早期診断と治療が極めて重要です。心臓病が疑われる患者の救急搬送時に救急車から受入れ病院へ12誘導心電図注2や車内映像などをデータ伝送することができれば、早期の容態把握が可能になり、発症から緊急治療の準備や実施までの時間が短縮されることが期待されます。また、治療までの時間を短縮することにより、急性心筋梗塞患者の救命率向上にも貢献することが期待されます。

 

これまで、第2期宮城県地域医療再生計画及び同事業補助金により、東北大学病院循環器内科下川宏明教授を実施代表者として、①大崎市民病院?大崎広域消防本部、②みやぎ県南中核病院?仙南広域消防本部、③東北大学病院の3者で、救急車からの「12誘導心電図伝送システム」の配備に向けて準備を行ってきました。この度、その準備が整いましたので、平成27年6月1日から本格運用を開始します。

 

本事業では、急性心筋梗塞患者の予後改善のための高度医療を遅延なく、また、地域の別なく全県下で効果的に提供できる救急医療システムを実現するために、まず、県北?県南の3次救急医療機関注3である大崎市民病院及びみやぎ県南中核病院をモデル施設として、救急車(大崎広域消防本部13台、仙南広域消防本部11台)への12誘導心電図伝送システムの配備?試験運用?データ転送確認等を進めてきました(図1)。

 

図1.システムの概要

 

従来は、救急車内ではモニター心電図注4(1チャンネル)で心拍を観察し、救急隊から病院への病状の伝達は電話による音声情報のみでした。そして、病院到着後に12誘導心電図(12チャンネル)を記録して、医師が緊急治療の要否を判断していました。

本システムの運用開始後は、胸痛患者を救急車に収容後早期に、救急隊が12誘導心電図を記録して、救急車から大崎市民病院?みやぎ県南中核病院へ伝送します(図2)。大崎市民病院?みやぎ県南中核病院では、患者が病院に搬入される前に、医師が容態を把握して緊急治療の要否を判断し、病院到着から治療までの時間を短縮することができます。「12誘導心電図電送」は、治療チーム招集の判断材料としても有用であるばかりではなく、救急救命士に対して適切な指示を行うことにより、言わば「バーチャルドクターカー」として病院到着前処置も可能となります。

12誘導心電図伝送システムの配備は、急速に全国的に広がっており、既に市内全救急隊への配備を完了した横浜市などでは、病院到着から治療までの時間が20~30分大幅に短縮されたと報告されています(図3)。

 

図2.病院へ伝送された12誘導心電図と車内映像

 

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図3.期待される効果

 

東北大学病院循環器内科においては、救急隊及び大崎市民病院?みやぎ県南中核病院に対して必要な支援を行います。また、救急隊において記録する現着から搬送までの時間経過、大崎市民病院?みやぎ県南中核病院において記録する受入れから治療に至る時間経過と転帰(治療経過及び結果(見通し))をデータ化し、その検証を行い、宮城県の救急医療において重要な急性心筋梗塞診療の向上を目指します。

 

 

【用語説明】

注1. 急性心筋梗塞:心臓の筋肉に栄養を送る血管(冠動脈)が突然詰まって血液が流れなくなり、心臓の筋肉の一部が死んでしまう(壊死する)病気。突然死の原因になることもある。

注2. 12誘導心電図:四肢と胸部の10カ所に電極を装着して、計12チャネルの波形を記録する心電図。急性心筋梗塞の診断に有用。

注3. 3次救急医療機関:一刻を争う重篤な救急患者に対応する医療機関。

注4. モニター心電図:四肢や胸部の3カ所に電極を装着して心電図波形を観察する。不整脈の検出には有用だが、急性心筋梗塞の診断には不十分。

 

 

【お問い合わせ先】
東北大学病院循環器内科
副科長 伊藤 健太(いとう けんた)
科長  下川 宏明(しもかわ ひろあき)
電話番号:022-717-7153
Eメール:ito-kenta*cardio.med.tohoku.ac.jp(*を@に変えてください)

【報道担当】
東北大学病院広報室
電話番号:  022-717-7149
ファックス: 022-717-8931
Eメール: pr*hosp.tohoku.ac.jp(*を@に変えてください)

 

関連資料

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