研究
周術期口腔支援センターを開設 -医科歯科連携を促進し、患者の生活の質向上に貢献-
東北大学病院は、がん治療や心臓血管病、臓器移植などの手術前術後において、口腔内を適切に管理し、術後合併症の予防や治療成績を向上させることを目的として、周術期支援センター(細川亮一センター長)を開設し、平成27年4月1日に運用を開始します。
1.背景
平成19年にがん対策基本法に基づいて策定されたがん対策推進基本計画は、平成24年に見直しが行われ、平成24年度から28年度までの5年間を対象に改訂されました。この改訂の中で、「各種がん治療の副作用?合併症の予防や軽減など、患者の更なる生活の質の向上を目指し、医科歯科連携による口腔ケアの推進をはじめ、食事療法などによる栄養管理やリハビリテーションの推進など、職種間連携を推進する。」という一文が加えられ、医科歯科連携の充実が盛り込まれました。また平成24年度から「周術期口腔機能管理』が保険収載される等、がん等の治療に対する歯科の関わりが求められています。
当院は、かねてより医科と歯科がひとつの病院の中で連携した診療を実践しており、入院患者及び外来に通院中の患者の口腔管理に積極的に取り組んできました。本センターは、これまでの医科歯科連携を強化するため歯科医師、歯科衛生士、歯科技工士がチームを構築して診療にあたり、患者の早期回復の促進に貢献することを目的としています。がん治療はもとより、臓器移植や心臓血管病の手術前術後の患者の口腔内を清潔にし、必要な歯科治療を行うことで、手術後肺炎等の術後合併症を予防します。また、術後早期の経口摂取再開が可能となるよう口腔管理を行います。
2.主な取り組み
(1)がん治療において
抗がん剤や放射線療法等、治療法の進歩に伴って口内炎等の口腔に関するトラブルが治療中に起こり、結果として経口摂取が困難となることがあります。強いては食事量の低下を引き起こし、がん治療に必要な体力を維持することが難しくなります。また、食事を楽しむことができず、生活の質の低下にもつながります。がん治療に歯科が介入することで、これらの口腔に関するトラブルを予防し、また症状の緩和をすることが期待されます。
(2)心臓血管病、臓器移植において
中程度異常の歯周病は、おおよそ、72cm2の傷、具体的には手のひら程の傷が開いている状態に例えられます。また、口腔内には多くの口腔内細菌が存在しています。この細菌が傷口から体に侵入すると、人工血管や手術部位に住み着いて炎症を引き起こすことがあり、折角の手術がうまくいかない原因の一つとなることが分かっています。そのため、手術前に口腔内を清潔にすることで、手術後の肺炎予防だけではなく、手術の部位によっては治療成績の向上にも貢献します。
3.今後の展開
新薬や新たな治療法の開発によって、今後、様々な病気の治療成績が向上し、社会に復帰する患者が増えていくことが予想されます。歯を含めた口腔内の良好な状態は、治療成績向上に貢献するとともに、入院中も食事を楽しむ等、生活の質の維持に不可欠な要因です。本センターでは、診療はもとより、地域への情報発信を積極的に行い、入院患者のみならず市民にお口の健康の大切さを伝えていきます。また、入院中、外来通院中の患者の健康を地域の歯科医院と一緒に守っていきます。
尚、4月1日(水)8:30?9:00、開所式を執り行います。ご取材をご希望の方は、下記お問い合わせ先にご連絡ください。
【お問い合わせ先】
東北大学病院 広報室
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ファックス:022-717-8931
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