近年、歯科医療においては専門分化が進み、特に大学病院では、う蝕?歯周病、義歯、外科疾患などの診断や治療に高度な専門性が求められ、多くの専門診療科が設置されています。しかしその一方で、複数の歯科疾患を抱える患者が、複数の診療科を受診しなければならない状況は、患者さんにとっては決して好ましい状況ではありません。そのため、初診の診査?診断から治療、経過観察に至るまで、同一の主治医が一貫して担当することが、本来あるべき医療の形態と考えられます。
地域医療においては、特定の専門分野にとらわれない安全で確実な一次医療（プライマリ?ケア）を提供できる「ホームドクター」や「かかりつけ医」の役割が重要視され、これは歯科医療にも当てはまり、「ホームデンティスト」や「かかりつけ歯科医」として位置づけられるようになりました。こうした背景から、平成8年の歯科医師法改正により、2年間の卒後臨床研修が開始され、さらに平成18年度からは、新規歯科医師免許取得者に対し、1年以上の臨床研修が必修化されています。
このような社会的要請に応えるため、平成14年4月に総合歯科診療部が設置されました。以来、同診療部では、う蝕?歯周病、義歯、外科疾患といった多岐にわたる歯科疾患に対応する包括的な歯科診療を実践するとともに、卒後臨床研修の管理?運営?指導を担当しています。また、平成18年度からの必修化に伴い、本学出身者のみならず、全国の歯学部や歯科大学から毎年約50名の研修医を受け入れています。
当診療部では、各専門診療科と連携しながら、患者さんの口腔全体を一つの単位として捉えた「一口腔一単位」の診療指針に則った全人的歯科医療を実践し、さらにそれを臨床教育として展開し、本学臨床教育の理念である「考える歯科医師」の育成を目指しております。