研究
多発性硬化症類似疾患の診断的意義?免疫病態を解明 ?脳内抗体産生病態に応じた検査判断が可能に?
多発性硬化症(以下MS)注1は脳や脊髄に多発性に繰り返し生じる脱髄性疾患注3です。多様な病態に起因する症候群と考えられていますが、その病因は未だに不明です。近年、血清中のMOG抗体がMSに類似の多発性の脱髄病変を起こす原因として同定されました。MOG抗体が関連する一連の疾患はMOG抗体関連疾患(以下MOGAD)と呼ばれています。しかしMSとMOGADの免疫病態や診断上の違いはよくわかっていませんでした。
東北大学病院脳神経内科の三須建郎講師らの研究グループは、MOGAD患者において、MOG抗体の一群が血液中ではなく脳内のみで産生されることに着目し、その病因と診断的意義について解析を行い、髄液MOG抗体が特定の臨床表現型(特に皮質脳炎)に関与することを明らかにしました。今後、臨床表現型の違いによって、優先する検査方法を判断することが可能となるなど、臨床への応用が期待されます。
本研究成果は、2023年4月15日(日本時間4月16日午前8時)国際科学誌Brain(電子版)に掲載されました。
【用語説明】
注1.多発性硬化症(MS):神経線維を覆う髄鞘(ミエリン)において選択的に炎症が起こり髄鞘が脱落する(脱髄)疾患で、再発と寛解を繰り返しながら徐々に進行性の経過をとるのが特徴です。脳内で持続的な炎症や抗体産生によって病態が起こると考えられているが未だに原因不明です。
注3.脱髄性疾患:19世紀に神経学の父Charcotによって概念を提唱されました。神経線維である軸索を囲むように覆う髄鞘が軸索を保ちながら選択的かつ炎症性に脱落する多様な疾患の総称で、MSがその代表的疾患であり、ほぼ同義ともされます。近年、さまざまな原因が明らかにされつつあります。
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