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仙台89ERS志村雄彦社長インタビュー(下)さまざまな人が一緒に暮らせる豊かな街そして世界をつくる?
仙台89ERS志村雄彦社長インタビュー(下)さまざまな人が一緒に暮らせる豊かな街そして世界をつくる?
TUHレポート 2022.08.19

仙台89ERS志村雄彦社長インタビュー(下)さまざまな人が一緒に暮らせる豊かな街そして世界をつくる?

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パープルデーでのコラボレーションの話から、地域のプロスポーツチームが果たすべき役割について、その思いを熱く語ってくださった仙台89ERS社長の志村雄彦さん。さまざまな障がいのある方も試合を楽しむことができる環境づくり、闘病中の方やリハビリに励む方を元気づけるアプローチ、医療従事者との交流など、医療?健康分野とスポーツとの連携が持つ可能性について、これからの展開が楽しみになるお話をお聞かせいただきました。

――試合を見たくても見られない方との間にある障壁を取り除き、誰もが見られる試合にしたいというお話でした。具体的にはどんなことを構想されていますか。

車いすの方も会場に来て、できるだけ不自由なく観戦できる状況を整えるというのは分かりやすいところですが、例えば視覚障がいの方が目で見ることはできなくても、プレーの様子や会場の雰囲気、熱気を音や肌で感じたりできないだろうかと。視覚障がいのある方は他の感覚が研ぎ澄まされているといわれますが、今チームが勝っているんだなとか、こんなに楽しい雰囲気の会場なんだなと感じてもらえるかもしれません。そういう試みもできないだろうかと考えています。会場で聴けるラジオ番組を用意し、実況中継するという方法もありますね。
いずれにしても、視覚障がいの方は試合を見ることができない、だから楽しめないだろうと決め付けず、どうすればその空間にいることを楽しんでもらえるかを考えるのが大切です。コート上のプレー音や声援や熱気を感じて、一緒に応援している気持ちになってもらいたい。それを目的に会場に来てもらうことで、外の空間との接点をつくれればと思います。
とはいえ今はそこまでのインフラ整備がきちんとできていませんが、目の見えない方が来られた時の対応、盲導犬と一緒に来てもらえるような体制、そういった部分にも踏み込むタイミングがいずれあると思います。

NINERS HOOP SDGsツリーと志村さん

――チーム単体というよりは、Bリーグ全体の取り組みにもなるかもしれませんね。

そうですね。われわれプロスポーツチームが率先して行うことで、子どもたちに対しても、社会の中のさまざまな方々と一緒に暮らす世界をつくらなければいけないんだよという姿勢を示せると思うんです。
個人的な話になりますが、息子と一緒にいた時に視覚障がいのある方が白杖(はくじょう)をついて歩いてこられたので、点字ブロックの上にいた息子をどけて通してあげたら、息子は「あの人は目が見えないから譲らなくちゃいけないんだね」と理解していました。それは個人的な出来事ですけど、われわれ仙台89ERSやプロ球団がそういう取り組みをしていくことで、社会全体に大きなインパクトを与えられると思っています。

――ほかにも取り組まれている事例がありましたら教えてください。

半田康延先生(元東北大学大学院医学系研究科教授)が開発した「COGY(コギー)」というリハビリ用の車椅子があります。半田先生やスポンサー様とタッグを組み、この「COGY」を、ホームゲームで89点以上取って試合に勝つたびにいろいろな施設に寄贈するプロジェクトを実施しています。リハビリに取り組んでいる方々にも何か貢献できればという思いからです。昨年7月、東北大学病院にも小児用を2台、寄贈させていただきました。

仙台89ERS様からご寄贈いただいたCOGYとともに

さまざまな疾患や受傷のある方が試合を見に来られる環境をつくると同時に、入院や通院をされている方が、試合を見に来るのを目標に治療やリハビリに励んでもらえたらうれしいですよね。医療従事者の皆さんはよくご存じだと思いますが、そういうことがきっかけで治ったり、良くなったりすることもあると聞いています。

――患者さんご本人が治るんだというポジティブな気持ちで、モチベーションを保つことが大事だという話は医療現場からも聞かれます。

それには、病院という閉ざされがちな空間の中だけではなく、仙台89ERSの試合を通じて外の世界を見られる機会を設けたり、私たちが行って「良くなったら見て来てくださいね」とお声がけをしたりすることで貢献できるかなと。ご高齢の方でしたら、バスケ好きなお孫さんもいらっしゃるかもしれません。そうなるとお孫さんと一緒に見に行きたいと思うじゃないですか。頑張って治してぜひ来てくださいね、とお伝えするような機会はつくりたいなと思っています。
これも個人的なことですが、去年の夏、祖母が100歳で亡くなりました。元気そうだったんですけど、コロナ禍の影響で私たちと会うこともままならず、そうなるとやっぱり精神的に落ち込んでしまいますよね。ですから、モチベーションが続かないというところを乗り越える手助けが少しでもできればと。

――志村さんのご自身の経験も踏まえて、さまざまな取り組みをしていこうという意志をお持ちなんですね。

同時に、それは球団としての社会的責任でもあります。バスケットの興行、試合をすることが一つの手段としてありますが、私たちの経営理念は、仙台の豊かなまちづくりに貢献していくこと。そのためにはやはり、どんな方でも触れられる仙台89ERSになっていくのが一番だと思います。仙台89ERSを見る、聞く、仙台89ERSのことを話す、支えていただく。どんな方にも心地よく楽しく観戦していただける状態をつくるのが使命だと思っています。

――そういう意味でも今回のB1昇格は大きかったですね。

はい。テレビでニュースをよく見ている方も多いと思うので、例えば敵チームであってもテレビで見た選手が仙台に来るから見に行こうとなるなら、それでもいいんです。とにかく足を運んでもらうきっかけになれば。

――今後の当院との連携にも期待しています。

連携とは少し違いますが、やりたいことがあって、エッセンシャルワーカーの皆さん向けにチケットを用意したり、試合に招待したりできればと考えています。これまでずっと、大勢の観客が訪れるプロスポーツの試合会場に来ることは難しかったと思います。徐々に制限が緩和されてきてはいますが、病院にお勤めの方の制限が解かれるのは最後になると思いますので、まだまだ時間がかかるかもしれません。それでもいずれ実現できたらと。
実はエッセンシャルワーカーの方たちに、仙台89ERSのブースターが多いんです。シフト勤務で夜の試合を比較的見に来やすいという方や、ご苦労の多い業務のストレス発散の場をスポーツやエンターテインメントに求めている方も多いようで。しかしこの2年ほどは、中国体彩网者なので見に行くのがなかなか難しいんですよ、と言われることが非常に多かったですね。

子どもたちと一緒に黄色い花を植えた花壇の前で

――スポーツと医療、異なる分野ですが身体に関わるプロ同士、交流したら何か面白いことが生まれそうですね。

医療に興味のある選手は多いと思います。選手それぞれに抱えているものはあって、体のことやけがのこと、メンタルのケアについても聞いてみたいこと、一緒に取り組んでみたいことがあるかもしれません。逆に医療分野の研究において、私たちのチームには多様な背景を持つ選手たちが所属していますので、仙台の中では研究対象としてはなかなか貴重かもしれないですね(笑)。

――これからもぜひいろいろなコラボをご一緒させていただければと思います。ありがとうございました。

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志村 雄彦(しむら たけひこ)

1983年宮城県生まれ。仙台高校でU18代表に選出、高校と慶應義塾大学のバスケットボールチームで日本一を経験。卒業後、東芝や仙台89ERS等で活躍。2018年に現役を引退、仙台89ERSのゼネラルマネージャーに就任、2020年から同代表取締役社長を務める。

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