臨床工学技士という職業との出会いは?
高校卒業後、清掃や引っ越し、コンビニなどでアルバイトをしていましたが、21歳の時、地元の友人が東北文化学園専門学校へ入学すると聞き、自分も同じ学校で中国体彩网の資格を取得したいと思うようになりました。両親、姉が医療従事者のため、憧れがあったのかもしれません。さまざまな学部の中から、不思議と、「臨床現場で工学を活かせる仕事」という入学案内だけでは理解しきれない臨床工学科に惹かれ入学を決めました。当時はまだ臨床工学技士の認知度が低く、自分も仕事内容を理解できたのは実習が始まる3年生になってからです。実習先の技士が、臨床現場で医師や看護師と意見交換しながら人工透析、人工心肺を操作する姿を見て、「実はかっこいい仕事なんだ。怪しい資格じゃなかった。」と安心したことを覚えています。
これまでの経歴や、現在の仕事内容を教えてください。
腎移植の少ない日本では、血液透析療法が多くの腎不全患者の生涯を支えています。そういった背景もあり、血液透析の工学的仕組みに興味が湧いたのと同時に、何とも言えない責任感のような気持ちが生まれ、専門学校卒業後は宮城県内の血液透析クリニックに就職しました。そこでは月曜日から土曜日の朝、昼、夕で患者さんが入れ替わり、1回4~6時間の血液透析を行いました。透析業務のほか、隙間時間で機器メンテナンスを行う必要がありとても忙しかったのですが、この経験でシャント穿刺(せんし)や機器メンテナンス、透析液水質管理のスキルを磨くことができました。
現在は血液透析以外にも、急性腎不全や重症敗血症に対する急性血液浄化療法や、難治性疾患に対するアフェレシス療法(*1)などの血液浄化業務をメインとしています。最近は、院内にある医療機器(AED、除細動器、生体情報モニタなど)の管理、運用、更新の適正化を図るため、医療機器管理ソフトのデータベース整備も行っています。
仕事をする上で大切だと思うことを教えてください。
急性血液浄化療法やアフェレシス療法の対象疾患は症例報告数も少なく、ガイドラインはありますが施設によっては治療条件や設定方法が違う場合があります。そのため、井の中の蛙にならないよう、学会や文献などで他施設の考え、経験、方法を学び、引出しを増やすことが大切だと思っています。
心に残っているエピソードはありますか?
東日本大震災では、県内多くの透析施設でライフライン停止となり、透析治療ができない状況になりました。東北大学病院は電気、水が使用できたため、急遽他施設の透析患者を引き受けることになりました。沿岸部で津波にあった患者さんは泥だらけの服で来院され、福島県の原発地域からの患者さんはバス内でガイガーカウンターで測定してから透析するなど、今までに経験したことのないことばかりで目まぐるしい日々が続きました。
この震災で、他施設と連携をとりスムーズに対応できるようにしておくこと、そして水配管や医療機器移動に必要なエレベーターなどの施設設備を知っておくことが大切だと学びました。
今後の目標はありますか?
当院の血液浄化療法は、腎不全患者への血液透析以外にも、アフェレシス療法や急性血液浄化療法と広範囲に対応しています。医療材料、技術も年々進歩しているので、これに遅れず対応していけるように、学術ばかりではなく実践を大切にしていきたいと思います。
また、MEセンター(*2)による内視鏡装置、生体情報モニタ、手術用エネルギーデバイスなどの高度?高価医療機器の管理を徐々に拡大し、安全使用と適正な更新に繋げていきたいです。
話は変わりますが、好きなことや趣味はありますか?
長男と一緒にプラモデルを作り始めたら楽しくて、自分が模型屋に足繫く通っていた小学生時代を思い出しました。今のガンダムは接着剤を使わないし、よく動くんです。技術の進歩に感心してます。
バイクも好きです。中学生の時に、映画トップガンでトム?クルーズがバイクに乗るシーンを観てなんてかっこいいんだと憧れ、高校卒業後に早速免許を取りました。バイクで妻や子どもと二人乗りで買物に出掛けたりしています。
*1 アフェレシス療法:体外循環によって血液中から血漿成分を分離し病因物質を除去する治療と、再生医療の末梢血幹細胞移植における幹細胞採取のこと。
*2 MEセンター:医療機器の一元管理を担い、その貸出、保守管理も行っている。