言語聴覚士を目指したきっかけは?
高校時代、学校行事の最中に大きな交通事故が起こりました。それを目の当たりにしたことが、医療に携わりたいと思うようになったきっかけです。医療系の学校を探していたところ、東北文化学園大学に言語聴覚学専攻が新設されたという情報をみつけました。看護師を目指そうと思っていたのですが、ちょうどはとこが言語聴覚士の資格を取ったと聞き、どんな仕事なのか話を聞いているうちに、病気や事故などで後遺症を負った人への社会復帰のお手伝いをする、リハビリという職に興味を持つようになりました。
東北大学病院で働くまでのご経歴は?
大学のゼミの教授が口蓋裂分野を専門としていたこともあり、在学中から小児の構音(発音)指導にとても興味がありました。しかし、口蓋裂分野は専門病院が全国でも数少なく狭き門なので、いずれはと思いながら、学生時代に実習させていただいた山形市立病院済生館で約3年間、成人の言語、嚥下リハを担当しました。結婚を機に出身の宮城に戻りたいと思っていたころ、東北大学病院で口蓋裂分野での募集があり、実際に見学すると在学時代からの思いが強まり、すぐに応募。2年後には任期満了となり一旦は子育てに専念したのですが、言語治療室の体制が変わり、また働かせていただけることになりました。今年4月からはフルタイムで勤務しています。
言語聴覚士として口蓋裂の治療にどのように関わるのですか?
主に口蓋裂の患者さんの発達と構音を1歳前後から診ています。低年齢の子に対してはなるべく楽しくということを心がけています。
一口に構音と言っても口蓋裂の患者さんは反対咬合といって下顎が上顎より前に出ていたり、上顎に凹凸があり、構音が難しいことがあります(舌の場所、形が何ミリか違うだけで違う音に聞こえてしまいます)。発達と構音の様子を評価し、正しい舌の形、位置で音を出すために訓練を行います。構音に問題がなくとも成長の過程で話すときに鼻から空気が漏れて歪んだ音になり、構音に影響を及ぼすこともあるので、中高生くらいまで言語の経過をみていきます。また、反対咬合の方は上顎を前に出す手術をすることもあるため、手術前後の言語評価もしています。このように口蓋裂の治療は歯科、形成外科、耳鼻科、心理などの多くの職種とチームで患者さんを診るので、他職種との連携も必要になってきます。
お子さんは病院に対してどうしても恐怖心を抱いてしまうことが多いです。ここでは楽しくお話や訓練をして、「今日も楽しかった」と思って帰ってくれたらいいなと思っています。
言語聴覚士として今後の目標は?
話すことはコミュニケーションにおいて大事なツールの一つなので、社会に出て話すことに困らないようになることが大切です。その子にとっては、楽しくお話していたら話せるようになり、将来的には、訓練していたことを忘れてしまうくらいになることを目標としています。そのためにはこちらの技術や指導の仕方が影響するので、日々技術向上に向けて邁進していきたいです。また、口蓋裂は専門的な治療が必要なため、県外からも患者さんが来られます。遠方の患者さんにも定期的な評価や訓練を継続できるように、今後、遠隔診療に挑戦していきたいと思っています。今年の日本口蓋裂学会では、コロナの影響で言語治療がストップした病院が多く、その際に遠隔診療(リモートでの訓練)を行ったという報告が多くありました。当院でもリモート勤務のスタッフがおり、遠隔で私の訓練に携わっています。将来的にはそのスタッフと共に、遠方にいる患者さんの言語治療を外来リハと同じクオリティで提供できるよう、環境を整えていきたいです。
お休みの日は何をされていますか?
2歳の子どもがいるのですが、公園に行ったり絵本の読み聞かせをしたり、子どもと過ごしています。たくさんお喋りするようになり、「ばいきんまんが好きなの」と教えてくれたり、「お散歩いこう」など、自分の考えを話すようになってきて、子育てが益々楽しくなってきています。この間は食卓をみて「さかな、ないな~」と言い出して、魚食べたかったの?とびっくりして急いで焼き魚を出しました。