生後すぐ検査し発見を
子どもは風邪などのさまざまな感染症にかかり、それぞれのウイルスや細菌に対して「免疫」を作りながら、感染症に強くなって成長していきます。
異常生まれつき
小児の原発性免疫不全症は、感染症と闘う免疫に生まれつき異常がある病気です。代表的な病気として、Tリンパ球がない重症複合免疫不全症(SCID)とBリンパ球がないB細胞欠損症(無ガンマグロブリン血症)があります。免疫不全症のお子さんは、お母さんからもらった免疫が切れる生後数カ月ごろから、肺炎、髄膜炎、敗血症などの感染症を繰り返します。いったん感染症にかかると治りにくいため、最善の治療を行っても大切な尊い命を落としてしまいかねない病気です。しかし、早期発見できれば、治療によって完治や通常の生活が可能となる病気でもあります。
2020年10月より、生後2カ月からのロタウイルスワクチン(生ワクチン)が定期接種の対象となり、下痢や嘔吐(おうと)を引き起こすロタウイルス感染症から赤ちゃんを守ることができるようになりました。しかし一方で、まれな免疫不全症のお子さんが診断されないまま生ワクチンによる感染症になってしまうことがあります。
これを解決するために、全てのお子さんから免疫不全症のお子さんを見つける「マススクリーニング(集団一斉検査)」が世界各国や国内の一部の県で始まっています。血液中のTリンパ球にあるTREC、Bリンパ球にあるKRECという遺伝子の量を測ります。この遺伝子の量が極端に少ないお子さんを見つけて、発症前に大学病院などの専門機関を受診していただき、早期診断を行うことができます。
予防接種の前に
生まれて数日の新生児全員のかかとからろ紙に採血して、先天代謝異常症の検査を無料で行う公的なマススクリーニングについてはご存じの方も多いと思います。宮城県公衆衛生協会は2021年4月から、宮城県と仙台市、産婦人科医と小児科医の協力を得て、免疫不全症と脊髄性筋萎縮症というまれな神経の病気も追加して同時に調べる、新しいマススクリーニングを始めており、現在は東北各県に広がっています。
河北新報掲載:2021年1月8日
一部改訂:2024年7月9日