新たな認知症治療薬も
認知症とは、認知機能が障害されることにより生じる病気です。その認知症にはアルツハイマー型認知症や脳血管性認知症、レビー小体型認知症などさまざまなタイプがあります。さらに正常圧水頭症や老年症候群、うつ病などによる認知機能の低下も認知症と同じような症状を呈します。従って、一概に認知症と言ってもその症状や原因はさまざまであり、正しく診断して治療に当たる必要があることは言うまでもありません。
見極めは難しい
認知症の中で一番多いタイプのアルツハイマー型認知症は記憶力の低下、すなわち「物忘れ」が主な症状になるため、「物忘れ=認知症」と捉えられがちです。しかし認知機能障害には、記憶力の低下だけでなく注意力の低下や視空間認知能力の低下、遂行機能(物事を段取りよく行う能力)の低下、言語能力の低下などがあります。
そのため、「物忘れ」以外にも「これまでとは何か違う、以前よりもできないことが多くなった」「混乱しやすくなってきた」のような症状にも気を付ける必要があります。ただし、加齢現象やストレスなどでも同じような症状は見られますので、どこまでが正常で、どこからが異常なのかの見極めは難しいといえます。
昨今、新しいタイプのアルツハイマー病治療薬が開発され、認知症の治療が改めて注目されています。この薬はアルツハイマー病の原因となるタンパク質「アミロイドβ(ベータ)」を消去する作用を持っています。
アミロイドβは症状が明らかになる10年以上前から脳にたまり始めており、認知機能障害が進行してしまった頃には既にアミロイドβが飽和状態になっています。そのためアミロイドβがまだ十分たまりきっていない時点から、アミロイドβの除去治療は始める必要があります。
早期発見が重要
がんの治療と同じように、認知症の治療も早期発見、早期治療が重要になってきました。新しい認知症の検査も開発されていますが、まだ可能性やリスクを指摘できる程度で、さらなる技術の進歩が待たれています。
東北大学病院ではこの4月から「認知機能外来」を設置しました。認知症診療の新たな局面に対応するため、認知機能低下の早い段階からの受診を促し、詳細な診察と精密な検査により早期からの認知症対策を行います。これからは、「物忘れ」や「以前とは何か違う、できないことが多くなった」などの状態に気付いた時点で早めに認知機能を調べ、認知症を予防する、あるいは備える方策を立てていきたいと考えています。
河北新報掲載:2023年4月28日
一部改訂:2023年5月15日