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INTERVIEW

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医療現場の隠れたニーズを見つけ医療と企業の課題解決につなげる
医療現場の隠れたニーズを見つけ医療と企業の課題解決につなげる
TUHなヒトビト 2024.07.17

医療現場の隠れたニーズを見つけ医療と企業の課題解決につなげる

未来医療人材育成寄附部門 助手 クリニカルスペシャリスト|奥山節子

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アカデミック?サイエンス?ユニット(ASU)(*1)をはじめとするベッドサイドソリューションプログラムで、企業の方が当院の現場で活動する際に医療従事者との間に入るリエゾンとして活躍している奥山さん。学生時代に「看護師に向いている」と言われて看護の道を選び、副看護部長まで務めた後、「あなたならできると思う」と言われてCRIETO(*2)に入職。「おだてられるとその気になっちゃうタイプなので」と笑う奥山さんですが、周囲にそう感じさせる発想力と行動力を持ち合わせ、医療現場のアンメットニーズを見つけるサポートをする傍ら、自らも社会のアンメットニーズを見つけ、解決する仕組みづくりに思いを巡らせています。

CRIETOに入職したきっかけと、現在の仕事内容を教えてください。

副看護部長を勤め上げた後、再雇用の1年間で看護学生を夜間看護助手として採用する仕組みをつくったり、内視鏡の洗浄を外部委託するための現場観察をしたりしていました。それまでずっと看護師として、臨床で患者さんやそのご家族、そしてスタッフのために一生懸命やってきた人生でしたが、これも入り口が違うだけで同じ目的につながっているんだなと感じました。そんな時、CRIETOで人材募集がありました。人口減少と高齢者増加による大きな課題に立ち向かう、創薬や医療機器開発に資する人材を育成する場所だと知り、少しでも関われたらという思いで応募しました。
現在はASUで参加企業の方をアテンドする役割を務めています。企業の方がバイオデザイン部門の中川敦寛部門長とブレーンストーミングし、目的?到達目標等を確認しながら、現場観察に入る2 ~3つの診療科を決め、どういう形で入っていくかを設計します。観察には企業の方と一緒に入り、医療現場との調整や観察の手法についてアドバイスしたり、ブレーンストーミングでは医療従事者の立場からの意見を伝えています。また、ASUはデザイン思考をベースにした6カ月間の課題解決プログラムを提供しています。デザイン思考の理解を深めてアウトカムを最大化するため、ASU活動前に2日間でランスルーするブートキャンプがあるのですが、その企画運営も担当しています。

企業のみなさんとブレーンストーミングを行う奥山さん

企業の方と医療現場に入ってどのようなことを行っているのですか。その際、心がけていることは。

ASUでは、対象とする問題、対象集団、アウトカムの3要素で構成する「ニーズステートメント」を、「誰にとって/どのようなアウトカムを得るために/何を解決するのか」という俳句のように一文にしてたくさん作ります。2カ月で100個ほど作成すると良いとされています。課題を解決する価値があるのかなど、課題の深堀りが難しく、支援していく私たちも苦労するところです。まずは医療現場に入る時は5感を駆使し、「共感?違和感を感じ取りましょう。そして事実を確認してください。大人がやりがちな判断や解決策、アイデアを出そうとしないように」と話しています。医療従事者が当たり前だと思っていることでも、現場を知らない企業の方が疑問に感じたことは、ニーズ探索の重要なきっかけになります。最初に現場に入る時はなるべく早めにブレーンストーミングを行って、企業の方が気付いたこと、違和感を持ったことを言葉にしてもらいます。例えば「患者さんが少しつらそうにしていました」という気付きだったら、どのような場面で患者さんはつらそうにしていましたか、それは何歳ぐらいの方で、どんな疾患のある方で、どうなればいいと思いましたか、と聞いていくんですね。その答えを具体的に掘り下げていくと、だんだんニーズステートメントが作られていきます。突き詰めていくと、結局見えているニーズに戻っていく場合もあって、やっぱり難しいですね。
サポートする上で意識しているのは、疑問?要望にはなるべく答えること、また何かに気付いたこと自体をきちんと評価することです。 一方で、あまり出しゃばりすぎないようにも気を付けています。医療現場を知っている私たちが意見すると、企業の方はそれが正しいだろうと思ってしまうので、特定の方向に誘導してしまわないようにと気を使っています。

入職して3年がたちましたが、感じていることややりがい、これからやってみたいことは。

アンメットニーズはそう簡単に見つかるわけではありませんし、その企業さんの事業につながるものを見つけて 6カ月でまとめるのは、なおさら難しいなと感じています。ただ、どういうふうに話せば引き出せるかなど、言語化を導くことは回数を重ねるごとに少しは上達してきたかなと思います。企業の方々が課題感を持って、悩みに悩んで一生懸命現場を見て、その中でハッとした気付きから「あ、これはもしかして」というニーズを発見できると、私たちもすごくうれしいですし、一緒に悩んで良かったなというやりがいにつながっています。
趣味でスポーツクラブに通っていて、そこに元看護師の先輩たちが多くいらっしゃって、65歳を過ぎてもとてもお元気で、「何か手伝えることはない?」と聞かれるんです。私も60歳を過ぎてから別な分野で仕事を始めて、本当にできるかなと不安でしたが、このように毎日楽しく働けているので、そういう方々に活躍してもらえる仕組みをつくりたいなというのが次の目標です。

プライベートでも活動的な奥山さん。院内で仙台名物「仙台すずめ踊り」を踊るサークル「星陵舞すずめ」を立ち上げました。
趣味で通うスポーツジム。元看護師の先輩と一緒になった日は、これまでの看護師経験を活かして何か活動できないかなど、相談会議がはじまることも。
「仙台?青葉まつり」が近づくと、同僚たちと毎日のように遅くまで練習し、本番にのぞむそう。

*1 ASU(アカデミック?サイエンス?ユニット):東北大学病院で臨床研究推進センターバイオデザイン部門が窓口となって推進しているプログラム。企業の方々が直接医療現場に入り、現場観察を通して多くのニーズを探索し絞込みを行い、新たな医療機器や医薬品?システム?サービスなどの製品化?事業化を目指す。
*2 CRIETO:臨床研究推進センターのこと。安全で有効な薬や医療機器の開発を支援する。

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奥山 節子(おくやま せつこ)

宮城県出身。仙台市立高等看護学院卒業後、東北大学病院に入職し、38年間看護師として勤める。2014年副看護部長に就任、総務担当で主に人事を担当する。2020年4月より未来医療人材育成寄附部門に入り、CRIETOバイオデザイン部門にてASU活動する企業様のアテンドをしている。

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