東北大学病院で働くきっかけは?
前職の日立ソリューションズ東日本で事業企画開発部門の部門長だった頃、システムエンジニアのメンバーから東北大学病院臨床研究推進センターのバイオデザイン部門が運営するASU(*1)に参加して医療系の事業を立ち上げられないかと相談を受けました。全社の事業企画の責任者ということで、私もシステム部門の担当者に同行してASUの打ち合わせに参加しました。そこでバイオデザイン部門長の中川敦寛先生と出会いました。ASUでは中川先生と色々な議論を交わし、修了後もセミナーに参加するなど交流が続いていたのですが、定年退職後に中川先生から直接電話をもらって、「ちょっと手伝ってくれない?」とお声がけいただいたのです。その時、宮城大学の教員でもあったので、そのまま続けられるのなら、ということでお受けしました。
ご定年前はどのようなお仕事をされてきたのですか?
技術者として、ITの開発者用ソフトウェア、国や大手キャリアのシステムなどを開発してきましたが、開発者?エンジニアとしてのキャリアは半分で、残りは技術系の部門を中心に組織横断的な仕事を任されていました。
東日本大震災が発生した2011年には、社内に地域復興貢献室が立ち上がり、最終的にはそこの部門長となり、地域の課題を解決していくために他の企業や大学と協力関係をつくる仕事をずっとやってきました。兼任していた宮城大学では、特任教授としてキャリア教育の授業を担当していました。日立で培った人脈を生かして、地域の企業に協力してもらいながら、職場見学などのカリキュラムを作っていました。
現在はどんなお仕事をされていますか?
ASUを推し進める、ということですね。参加企業へのアプローチから始まり、リハビリや救命医療部門など多くの診療科の方々にご協力いただきながら、参加していただいた企業の方がしっかり現場観察をしてバイオデザイン(*2)の手法に則って成果を出す、つまり事業のネタを見つけるまでのお手伝いをしています。ASUの手法も毎年進化しているので、部門の看護師メンバーと共に、どうやったら企業さんが有意義な現場観察をして事業化につながる課題にたどり着けるのか、そのナビゲートのプロセス改善にも取り組んでいます。
医療の現場に来られていかがですか?
日立で復興の仕事をしていた時に、壊れたものをもとに戻すだけではなく地域をいかに住みやすい場にしていくかという課題に向き合いました。被災者が住む場所は様々です。例えばリアス式の沿岸のように小さな町が点々としていて高齢者が多い地域では、健康課題を解決するためにICTを活用した地域包括ケアが欠かせません。そういったところで以前から医療?福祉の課題認識を常に持っていましたので、今、大学病院の内側から色々な技術を用いて健康や医療の課題解決をサポートするというモチベーションにつながっています。ビジネスモデルをどう展開していくか、という知識と経験を生かし、病院という新たな場所で企業の新しい技術開発のお手伝いをできればと思っています。
コロナ禍の中、ご苦労も多いと思いますがこれからの目標はありますか?
入職してからはシリコンバレーの視察の機会をいただくなど経験を積みながら、準備を進めてきました。更にASUの活動を強化しようという時に中国体彩网の影響でそれまで当たり前にできていたことができなくなってしまいました。企業はもちろんですが、各診療科や医療従事者との調整も今まで通りにはいきません。しかし、コロナ禍でも立ち止まることなく、中川先生はどんどん先を見据えた活動をしています。その後を追いかけ、支えながらASUを通し、企業と大学病院との連携による技術開発とビジネス創出を推進していくことが当面の目標です。また、それを通して医療従事者の働き方改革などにもつなげられたらなと思っています。
個人的には健康な限り、現役で働いてなんらかの形で地域に貢献していきたいです。ここに入職してすぐの頃に、仙台市の生涯現役促進協議会が企画した冊子の取材で定年後の仕事について話したのですが、それを見てくれた昔からの知人に「生涯現役の星ですね」と言われました。目指すのは75歳まで現役。周りからも「あなたならできる」と言われています。そうなれるように頑張っていきたいです。
プライベートではご趣味などありますか?
学生時代から40年以上フォークダンスをやっています。本格的に民族衣装を身につけて、色々な国の伝統舞踊を踊るのですが、いい運動になって健康維持に繋がっていますし、色々な国の民族と文化の理解にもなっています。コロナ禍で人と組んでの踊りはできなくなりましたが、輪になったり一列になったり色々な形式があるので、ソーシャルディスタンスを保てる形で続けています。
*1 ASU(アカデミック?サイエンス?ユニット):企業がベッドサイドで現場観察をする環境を提供、現場のニーズから新たな製品開発などにつなげる取り組み
*2 バイオデザイン:医療機器分野のイノベーションを牽引する人材を育成することを目的に、米スタンフォード大学が2001年に立ち上げた教育プログラムのこと。 バイオデザインでは、医療現場のニーズを出発点として、医学や工学、ビジネスなど分野横断的な視点から、革新的な医療機器を創出することを目指す。